野鳥録音のための双眼鏡

はじめに
 私が実際に使用している機種、あるいは手にとったことのある機種から、野鳥録音にお勧めの機種をご紹介します。はじめにお断りしておきますが、個人ですべての機種を試用することはできません。そのため、ここでは実際に使用し自信を持って評価できる機種についてのみ紹介しています。もちろんこれ以外にも、適切な機種があると思います。ここに紹介していないからといって野鳥録音に適さないというわけではありませんのでご承知おきください。
 ここでは、バードウォッチングそして野鳥録音に適した双眼鏡を選ぶ時に、どのような点にこだわって選定しているのか、そして使用しているかというヒントを、読み取ってもらえればと思います。(写真は所有している双眼鏡の一部)

バードウォッチング用
双眼鏡とは

 バードウォッチングに適した双眼鏡は、倍率が7〜10倍、対物レンズの口径が30mm前後のも機種がお勧めです。そして、実際に自分の手に持ってみて、しっくりくる双眼鏡を選択するようにお勧めしています。手に持ってしっくりくるとは、双眼鏡を下から持ち上げるようにして目に当て、利き手の人差し指が楽々とピントリングに届くか、筐体を手に持ってブラブラ下げてもしっかりと握れるかといったことがチェックポイントです。たとえば、8×30の”8”は倍率で、80m先の鳥が10mのところにいるのと同じに見えることになります。”30”は、対物レンズ(見るときに対象側にあるレンズ)の口径、単位はmmです。この数字が大きいほど、明るく視野も広く見やすい双眼鏡となりますが、大きく重くなるのが難点です。また、安くて良い双眼鏡がもちろんありますが、予算のゆるす限り良いものを買うことをお勧めします。少なくとも4-5万円以上の機種から選ぶとよいと思います(写真は蒲谷先生愛用の機種)。

野鳥録音のための機種
 野鳥録音の時は、レコーダーやマイクなどの機材を持ち、操作をしなくてはなりません。そのため、首から大きな双眼鏡を提げるのはじゃまになります。しかし、鳴いている鳥の種類を確認するために、双眼鏡はなくてはならない必需品です。そのため、双眼鏡は中型から小型のもので、なおかつ高性能で使いやすいものを選ぶ必要があります。
 ここでいう小型機は7〜8倍で対物レンズの口径が20mm程度のもの。中型機は7〜8倍で口径30〜35mm程度のもの。大型機は7〜10倍、口径が40mm程度の機種ということにします。ごらんのように、倍率はさほど変わりがありません。なぜなら手持ちで使用するには7-9倍程度が限界で、新聞広告や通販でバードウォッチング用100倍などという機種は言語同断、鳥を見たことのない人が設計し販売しているとしか思えません。
 なお、口径20mmが小型、40mmが大型と2倍の数字ですが、これは直径であるためにレンズの面積は約4倍となり、そのため筐体はそれ以上の大きさとなります。たとえば、小型のニコン8×20HG D CFが約250gなのに対し、大型のカールツァイス7×42T*P*は、約1.5kgと7倍もの重量差となります。

大型機
 私は野鳥録音もしたい、しっかりと野鳥も見たいというたいへんわがままなバードウォッチングをしています。そのために、双眼鏡はどちらかというと大型機を使用してます。
 録音機にウォークマンタイプを選びマイク1本で録音するような機材構成であれば、機材をウエストポーチに入れて移動できます。そうであれば、双眼鏡も大型でも苦にはなりません。
 以前に常用していた機種は、カールツァイス7×42T*P*です。この双眼鏡は、明るくシャープで広い視野は、究極の双眼鏡とも思えるほど素晴らしいものです。そのため、野鳥の調査では本領を発揮してくれました。公園の暗い藪のなか、シジュウカラの雌雄の区別までできるのは、記録を録るためには重要な機能です。平地であれば、1.5kgほどある重量と大きさも気になりません。しかし、さすがに他の機材が加わる野鳥録音では、使用を断念するしかありませんでした。
 現在、常用しているのはスワロフスキーのEL8.5×42(当項写真)です。私が今まで使用してきた双眼鏡のなかで、最高のバードウォッチングを楽しめるバードウォッチングのための機種に思えてなりません。クリアな画像は、野鳥の美しい姿をそのままに伝えてくれます。明るい画面は、藪のなか、黄昏のなかでも鳥の姿がよく見えます。1kg近い重さにもかかわらず手に取ったときのバランスもよく、安定してグリップできます。はじめは中央軸のないデザインに違和感を覚えましたが、実際に使ってみると手で持つときにたいへん持ちやすい構造であることがわかりました。
 カールツァイス7×42B(前項写真)も、平行して使用している機種です。明るさ、シャープな見え味とも双眼鏡の最高峰です。造りがシンプルというかオーソドックスなタイプですから、故障が起きにくいという信頼感があります。海外旅行など、故障が起きては困るときに手元に置いておきたい機種です。少なくとも15年以上使用していますが、一度も故障したことはありません。また私は、この機種の筐体を包むゴムの堅さ、手触りがいちばん手に馴染みます。
 なお、大型機の場合、私の体型では首から下げるのは大きすぎます。多くの場合、肩から提げて移動し、野鳥が出そうな時は手に持って歩きます。そのため、肩からさげても滑ることのない幅広で摩擦係数の多い素材でできたストラップが必要です。また、手で持って歩いてもグリップできる細さで、なおかつ表面が滑りにくい加工がされていると便利です。

中型機
 別に野鳥録音でなくても、中型機は扱いやすく汎用が効き、バードウォッチングをたっぷりと楽しめるタイプです。私は、このところ山歩きが多くなりました。そのため、少しでも軽くて高性能の機種をということで選んだ双眼鏡が、ニコンの8×32HG D CF(写真)。実売価格10万円以下に関わらず、明るさ、シャープな画像とも、20万円近い高級機に匹敵する見え味です。私の手には、よく馴染む筐体のデザインは吸い付くようにグリップできます。野鳥録音をしながらバードウォッチングをするためにジャマにならない大きさで、ありあまる性能です。接眼レンズのカバー、視度調整のクリックなど、バードウォッチング用と思える細かい設計も気に入りました。ただ、私にはゴムが柔らかすぎるように感じること、首から下げたときにストラップ受けの位置が悪いために斜めになること(筐体がまっすぐに垂れない)など、気になる点もあります。
 カールツァイスの中型機でお勧めは、8×30 B/GA T* ClassiC。信頼のおける造りと、シャープな画像は、バードウォッチングには申し分ありません。やや視野の周辺にボケがありますが、比較的広い視野のため気にならなければ気にならない程度です。また、最短距離がたいへん短く、間近に来た池の鴨類、昆虫、花を観察するにも活用できる機種です。
 スワロフスキーEL8×32WBは、EL8.5×42はそのまま小型にした感じの機種ですが、覗いた感じはEL8.5×42と変わることのない明るさとシャープな画像に思えます。より小型で軽量、多少価格が安いことを考えれば、全体の性能はこちらのほうが上かもしれません。蒲谷先生は、現在当機種を愛用しています。

小型機
 小型であるということは、対物レンズの口径が小さいということ。そのため、視野が狭く暗いというマイナスがあります。初心者にとっては、視野が狭いとなかなか目的の鳥を視野に捕らえることができず苦労します。暗いと、藪のなかや夕方のバードウォッチングでは楽しみが半減です。そのため小型であればあるほど、より高性能な双眼鏡を選んでマイナス面を少しでも補うようにしましょう。
 カールツァイス10×25 BT* ClassiCは、蒲谷先生がかつて使用していた機種で、お持ちのものを見せていただいたら、カールツァイスのロゴがすり切れているほど使い込まれていました。
 ライカ8×20BC(写真左)は同じ口径の双眼鏡を見比べたところ、視野がとても明るくシャープに感じました。また、ユーロ安の時は4万円以下の価格になったこともあり、購入しました。購入のさい、肉眼では読めないくらい薄暗い棚に並んだ帳簿の背表紙に書かれた文字がはっきりと読めました。とても20mmという小さな口径とは、思えない明るい視野です。難点は、ストラップが細く絡みやすいこと。光軸ズレの修理に出したところ、ドイツ送りとなり約3ヶ月かかったことなどがあります。
 ニコン8×20HG D CF(写真左)は、ライカ同様に明るく価格も安めなのが、魅力です。スワロフスキーPOCKET8×20Bは、ライカ以上に明るさを感じた機種ですが、ニコン共々、ピント合わせのリングが前方にある構造です。そのため、はじめはピント合わせに戸惑います。これは、慣れれば問題はないと思いますが、光学性能がよいだけに残念な構造です。
 小型機は、首から下げるとストラップが細いためによく絡みます。とくに野鳥録音で、さまざまなコードを操作しなくてはならないために細いストラップは、ジャマです。そのため、少しでも太いストラップに付け替えることをお勧めします。ポケットに入る大きさなのですから、それを活用しない手はありません。しかし、小さいからと言って胸や上着のポケットに入れると山登りなどの動作で落とす危険があります。腰にケースをつけるか、ウエストポーチに入れて取り出して見るなどの使い方がよいでしょう。
(2004年10月20日・起稿)