蒲谷先生曰く「野鳥録音のコツは、一に早起き、二に早起き、三四が無くて五に早起き」だそうです。野鳥はとにかく朝が早く、初夏のコーラスのピークはまだ暗い内からはじまります。朝は、空気が安定しているので声がよく届く、虫がまだ活動を始めていないのでその前に鳴いておくと野鳥の都合と、人工的な音が少ない、風が少ないという録音する者の都合が一致するのがこの早朝です。仮に録音をしなくても早朝の空気、夜明けのムードなど、自然がいちばん輝いて見える瞬間を体験することをお勧めします。
良い音を録るのには、いかにノイズをなくすかにあります。まずは自分が立てるノイズ、これは服の衣擦れの音、重心を変えた時の足の音、お腹の音などがあります。また、マイクを持つとグリップノイズ、コードに触れたり揺れたりするとコードのノイズが入ります。どうすれば、どういうノイズが入ってしまうのか、いろいろ試してみて回避しましょう。
人工的な音でいちばん困るのは、自動車、航空機などの音。これは、場所と時間で避けるしかありません。この他、電柱にあるトランスの音、別荘などではボイラー、エアコン、冷蔵庫、自動販売機の音が、知らぬ間に入る困りもののノイズです。思わぬものとしては、ガードレール、鉄橋が鳴ります。
自然の音でいちばん多いのは、流れの音。あるいは場所によっては波の音などです。マイクの方向や岩や建物の陰に入って、少しでもノイズのない所を探しましょう。
私の経験から、よい音を録るためのコツは、いかに野鳥の近くにマイクを置くかです。夜明け前は、暗いので鳥からも見えず思いの他、近づくことができます。野鳥によっては、さえずる場所が決まっていますから、あらかじめマイクを置いて待って録音します。あとは、ひたすら驚かさないようにそっと近づくことでしょう。
蒲谷先生曰く「鳥の声を聞きながら近づくと、これ以上来るなという信号がわかる」といいます。さえずりのなかに地鳴きを交えたりするのがその信号です。野鳥の気持ちがわかれば、よい音が録れることになります。
なんと言っても野鳥のことを知らなくては、よい音が録れるわけがありません。日本野鳥の会の探鳥会に参加したり、野鳥の本を読んだり、鳥仲間と交流することで、知識を深めていきましょう。ときおり受けるバードウォッチャーの質問や意見には、憶測や思いこみによる知識がたぶんがあります。ときに、論文や専門書を読んで、科学的なものの見方を身につけましょう。
また、1回でも多くフィールドに出ること。これにより、自然の中での野鳥の動きや生態をナマで体験すること、機材に慣れることで、よりよい録音を効率よくできるようになると思います。
野鳥録音のマナーは、自然のなかで野鳥の声を流さないこと。野鳥の声、さえずりは縄張り宣言であったり求愛の意味があり、野鳥の生態を攪乱する危険性があります。絶対に止めましょう。ある意味、これ以外のマナーは必要ありません。なぜならば、マナー違反をしたら録音できないからです。驚かしたら鳴きやんでしまいますし、飛び去ったらもとも子もありません。野鳥にやさしくしない限り、よい録音はできないのです。
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