POCKETRAK W24 & C24
使用リポート



1.はじめに
 近年、メモリーを記録メディアとする録音機(以下、メモリー録音機)が、各社から発売されるようになりました。百花繚乱の様を呈しています。傾向としては、低価格で高機能、一般受けを狙った汎用機種が多数です。また、機能は盛りだくさんで果たして普通に録音していて、この機能を使うことがあるのだろうかと疑問を持つほどの機能満載となっています。
 そのような中で発売されたW24とC24も同様の傾向にあります。また、室内での演奏を録音することを主眼に置いて設計のコンセプトが置かれているように思えます。しかし実際に使用してみると、価格、小型軽量、多機能の一部を活用することで野鳥録音に十分に使える機種だと思いました。以下、それぞれの項目において詳しくリポートします。


2.使用機種
YAMAHA POCKETRAK W24(写真右・以下、W24)
  シリアルNo.PX01975/XK01251
YAMAHA POCKETRAK C24(写真左・以下、C24)
  シリアルNo.PH01959/PY03648
  ※いずれも、ヤマハ株式会社EKB・LM営業部営業推進室より提供されたものです。
  ※W24には2台ともTeamのTG016GOMC26A(16G)、C24にはそれぞれKingstonのSDC4/8GB (8GB)と東芝のSD-MD008GA(8G)を増装して使用しています。
  ※メーカーURLは下記です。   http://www.yamahasynth.com/jp/products/recorders

3.使用期間
2010年5月〜10月 およそ半年間・使用続行中

4.使用場所
 栃木県日光市戦場ヶ原・霧降高原など
 群馬県利根郡片品村尾瀬
 千葉県船橋市船橋海浜公園
 千葉県習志野市谷津干潟
 千葉県香取郡東庄町笹川
 東京都文京区六義園
 東京都北区浮間公園
 東京都板橋区戸田緑地
 東京都台東区上野動物公園
 東京都多摩市多摩動物園
 東京都八王子市陣馬山
 埼玉県さいたま市桜区大久保農耕地
 神奈川県伊勢原市大山 
 兵庫県美方郡香美町蘇武岳 など。

5.比較機材
 ソニー PCM-D1
      PCM-D50
      PCM-M10
 マランツ PMD620
 ローランド R09
 ズーム H2 など。
 写真は、右からPCM-D1、PCM-D50、W24、C24

6.セット構成
 W24は、本体の他に単3アルカリ乾電池 、ワイヤレスリモコン、カメラ三脚ネジ穴からマイクスタンドのネジ穴への変換アダプター、スポンジのウインドスクリーン、編集ソフトのCUBASE AI 5のDVD-ROM 、USB ケーブル、取扱説明書。
 C24は、本体の他に単4型アルカリ乾電池、編集ソフトのCUBASE AI 5のDVD-ROM、マイクを取り付けるためのクリップ、取扱説明書。
 なお、どちらもCUBASE AI 5は、インストールしませんでしたので、評価をしていません。マニュアルは、どちらもほぼ同じ内容で、基本的なことは書かれていると思います。使い始めた時、使用方法が不明な時、戸惑った時に頻繁にマニュアルを参照しました。おおむねマニュアルを開けば、目的の記述に到達できて解決することできました。
 写真は、それぞれのセット構成。右がC24、左がW24。

7.外装
 W24とC24とも手に取った時に感じるのは、おどろきの軽さです。電池とスポンジの風防含む実測値で、W24が95g、C24が65g、いずれも100gを切っています。大きさは、W24が携帯電話、C24に至っては100円ライターはオーバーですが、驚異的な大きさと軽さです。後で述べる放置録音にしてもタイマー録音にしても、自然の中にどこにでも置くことができます。
 バードウォッチャーには重い双眼鏡が必携、さらにはカメラと装備が多く、荷物が重くなりがちです。それに加え録音機も持つと、この軽さは重要です。
 また、野鳥録音は一発勝負、同じチャンスは2度とないかもしれません。それに、機材の故障や操作ミスで録音の失敗の可能性は絶えずつきまといます。それを避けるためにもバックアップの体制が必要です。両機をバックアップ機とするならば、軽さはありがたいものです。
 W24のマイクガードは金属製ですが、それ以外の外装はプラスチック製です。色は光沢のある黒、いわゆるピアノブラックです。そのため、プラスチックのわりには高級感があります。
 W24は、裏面に三脚に取り付けられるネジ穴があります。このネジ穴が、かなり下に付いているためにミニ三脚に取り付けた場合、バランスが悪くなります。
 C24は、USBのソケットを引き、セットに入っているクリップに差し込むことで、三脚変わりにすることができます。

8.操作
 メインの操作である録音、再生に関しては、操作は簡単で誤操作をするようなこともなく使いやすいと思いました。
 ただ、側面のスイッチ類にやや難がありました。たとえば、W24は、ALCのONとOFF、MICのHIGHとLOWの切り替えスイッチがいつの間にか動いていることがあったので現状ではビニールテープで留めて使用しています。
 C24は、PowerスイッチとLINEとMICの切り替えスイッチが並んでいることとどちらもスライドスイッチのため、誤操作をしました。
 どちらも、起動させて録音までの時間があまりにも早いので驚きました。一瞬のチャンスにかける野鳥録音には、かかせない機能です。オートパワーオフの時間を1分程度に設定し、すぐに電源が落ちていても起動時間が早いので問題はありませんでした。ただ、W24に16Gを増装したところ、メモリーチェックをしているのか、かなり時間がかかるようになってしまいました。それでも、普通の録音機程度の起動時間となりました。

9.内蔵マイク
 ほとんど内蔵マイク使用、48kHz/16bit、マニュアル設定で録音しました。その感想です。
 音に関しては、W24は素直で自然な音に感じました。低音から高音までくまなく捉えてくれています。同価格の録音機と比べて遜色は、ありません。スペクトル表示をさせて音源を見ても均一に音があり、ノイズなどはありませんでした。
 C24は、どちらかというと低音が強調されています。その結果、グランドノイズの音が大きく録れているために、遠くで鳴く野鳥の声が小さく、弱く聞こえます。カメラのレンズにたとえれば、広角レンズで撮影している感じで、近くに音源がある=鳥が10m程度の近くで鳴いてくれた場合にはノイズとのバランスがよいのですが、離れて鳴いたり声量が低いと、より遠くに聞こえてしまいます。
  ステレオ感は、W24がよりシャープで、C24でもそこそこ感じることができます。音源が左右移動をしていく状況では、両機種とも移動がわかります。C24は、前述のとおり音源との距離をより遠くに感じてしまうためにステレオ感も希薄になるということでしょう。
 なお、ソニーのPCM-D1は96kHz/24bitで録音すると20kHzと30kHzに帯状のノイズが出ます。W24、C24とも試しに96kHz/24bitで録音をしスペクトル表示を見ましたが、そのようなノイズはありませんでした。
 両機種とも録音ボリュームはフルで録音しました。マニュアル設定で40です。これに、もう少し余裕があれば静かな環境で遠くに鳴いている鳥の声を録る場合には、ありがたいと思いました。同様に、同価格帯にあるH2、R-09、PMD-620では、やはりフルで録音しています。ようするに、できたら-12db、少なくとも-24db欲しいところなのですが、近くで鳴いてくれないとこれだけのゲインは得られません。ただ、いずれもソフトでボリュームを上げ調整することができますが、最初から録れれば一手間、減ります。
 なお、PCM-D1で同じようなゲインを得ようとすると7/10、PCM-D50で8/10ですみます。この余裕がほしいところです。
 また、フルが40という中途半端な数字なのでしょうか。R-09も30です。いずれも、100まであるのかと思い押し続けました。40で止まってしまいますが、故障ではありません。
 なお、外付けのマイクでの録音は行っておらず未検証です。野鳥録音の場合、内蔵マイクが付いて1台で完結している録音機に、わざわざ重くてかさばる他のマイクを付ける必要はないという判断です。
 以下、サンプル音源です。W24とC24をいずれも並べて録音しています。フェードイン、フェードアウト、ボリューム調整をしているだけで、低音ノイズの軽減など加工はしていません。

せせらぎの音
収録年月日:2010年5月16日
収録場所:栃木県日光市稲荷川流域
録音メモ:別荘地のなか。地面においての録音。音源となる流れからは1m。


W24

C24
シジュウカラ
収録年月日:2010年6月21日
収録場所:東京都文京区六義園
録音メモ:にぎやかな街のなかの緑地、両機種を手に持っての録音。鳥との距離は、15mほど。


W24

C24
ウグイス
収録年月日:2010年5月15日
収録場所:栃木県日光市稚児の墓
録音メモ:静かな山の中、倒木の上に並べての録音。鳥との距離は20m。


W24

C24
アオジ
収録年月日:2010年6月26日
収録場所:栃木県日光市戦場ヶ原
録音メモ:にぎやかな高原、杭の上に置いての録音。鳥のと距離は10m。


W24

C24
クロツグミ
収録年月日:2010年6月12日
収録場所:栃木県日光市稲荷川流域
録音メモ:にぎやかな森の中、タイマー録音で岩の下に置いての録音。そのため鳥との距離は不明。


W24

C24
10.ディスプレイとメニュー
 W24、C24とも液晶画面が小さいのは小型軽量のため致し方ないと思いますが、C24はさすがに小さすぎて老眼の私はいちいち眼鏡をかけなくてはなりませんでした。
 視認性は、普通。炎天下の日向では他の録音機同様、見づらいことは否めません。LEDが点灯されていれば、日陰や自分の影の下では、問題なく情報を読み取ることができます。
 アイコンで表示し見やすさの工夫の跡が感じられますが、項目が多いので、わかりにくいところがあります。また、ボリュームのインディケーターに目盛りが無いためにどのくらいの音量を得ているのか分からない不便さがあります。せめて-12デシベルの位置を表示があるとありがたいです。
 メニューは、英語表示のためわかりにくいところがあります。とくに、設定とキャンセルが曖昧なところがあって、設定し終わってからメニューから脱出しようとすると、キャンセルをしてしまったのではないかと不安に思う時があります。なれればOKなのでしょうが、はじめは戸惑いました。

11.風防
 W24は、スポンジ製のウインドスクリーンが添付。C24は無しですが、室内でもエアコンの風がありますし、マイク保護のためにも必携だと思います。
 W24のウインドスクリーンはディスプレイが隠れることの無いように浅いため、すぐに落ちます。実際1個は無くし、1個は落としましたが、親切な人が拾ってくれました。
 そのため深いタイプを探し、W24はWind Tech 300Series(720円)、C24は同じく600Series(560円)をマジックテープで留めて使用しています。ただ、液晶がほとんど隠れてしまうために液晶部分を切り取っています(写真右)。
 スポンジ製の風防では自然のなかでは能力不足のため、毛足の長いウインドジャマーが必要です。W24については、Rycrte製のもの(写真左)とPCM-D50のオプションが現状では使用でき、流用しています。ただ、C24に合うものは今のところ見つけていません。

13.バッテリ
 バッテリはW24単3、1本。C24単4、1本。さらに、カタログ値で44.1kHz/16bitで録音した場合、W24は約38時間、C24は16時間と長時間録音ができるのは驚異的です。もっとも強力なナショナルのエボルタを入れると、カタログ値に近い持続時間を得ることができました。野鳥録音の場合、スタンバイ状態が長かったり、点けたり消したりすることが多いので、カタログ値通りになりません。しかし、両機種とも長時間録音をすることが多かったので、カタログ値と同様の時間、稼働していました。ただ、寒冷下でのテストは行っていませんので、寒さの中でどれだけ持つかは未検証です。
 バッテリが持つということは、後述のタイマー設定でとても有利です。

13.ファイルの転送と形成
 ファイル名に時分が入ります。たとえば、001A_100604_0300となります。この001Aは収納フォルダー名、2010年6月4日午前3時00分という意味になります。記録性を重んじる野鳥録音では、ありがたい機能です。また、同じファイル名が形成されることも少なく、上書きされる可能性も少なく安心です。
 消してしまったファイルを復活させる「ごみ箱」フォルダー機能は、使用しておりませんが、いざというときに復活できると思うと安心です。
 W24の場合、本体をUSBコードでつなぐのと、SDカードを取り出しカードリーダーで読み込ませるのとでは、カードリーダーの方が短い転送時間ですみます。長時間録音を行い大きなファイルができてしまうW24では、データの保存先をSDにしてカードリーダーから読み取っています。
 C24は、そのままUSBのソケットに直結できますが、軽いとは言えC24自体の重さでソケットにかなりテンションがかかります。そのため、本を重ねて高さを調整し、その上にC24を置いて使用しています。


14.タイマー録音
 W24、C24とも、バッテリの持続時間、増設メモリーによって長時間の放置録音が可能です。野鳥の鳴きそうなところ、ソングポイントを見極めて、置きっぱなしにしての録音ができます。長時間のデータの収集、夜間や早朝の録音をすることができます。
 また、W24、C24とも時間を指定してのタイマー録音もできます。タイマー録音は、野鳥録音にとって画期的な機能だと思いました。たとえば、コーラスのピーク時の午前3時から午前6時に設定し日曜日に山の中に置いておきます。そして、7日間録音し、次の日曜日に回収に行っても余裕で録音ができることになります。W24ならば、2週間後でもOKです。これは、バードウォッチャーのみならず研究者にとってはありがたい機能です。それも、長時間持つバッテリ、大容量メモリーの増装可という機能と相まって発揮できる機能だと思いました。これらがひとつ欠けても発揮できない機能です。
 これ以外にも、アイディアやロケーション次第で野鳥の素顔を録ることが可能だと思いました。
 ただ、最初は失敗しました。設定したつもりが、設定されていなかったのです。それは、設定終了は、最後にSTOREで決定となりますが、最初の項目にONとOFFあり、これで良いと思ってしまったためでず。STOREは、普通”店”ですから意味が分からなかったです。できたら、タイマー録音が設定されたら時計のアイコンが出るとか、わかりやすくなっているとありがたいと思います。
 また、タイマー録音の設定の時に、記録先が内蔵メモリーか増装メモリーかの選択があります。初期設定で、増装メモリーに保存先を指定しているので、それで良いと思っていました。ところが、本体メモリーに設定されていたため2G分しか記録されていないということがありましたので、注意が必要です。
 なお、写真はW24をビニールの袋で本体をくるみ、さらに1辺をカットした密閉容器に入れ、マイク部分を少し出しています。これを、この岩の下に置いて録音しました。

15再生
 イヤーフォンを使っての音楽再生は、使用していません。音楽を聴くのであればiPod、携帯電話のミュージックプレイヤーを使用しています。アルバムの選択など、再生専用機のほうが使いやすく、録音機の機能として評価することはあまり意味を感じません。


16.その他の機能
 W24には、赤外線によるリモコンが付いていて、基本的な操作ができます。R-09Hなどではリモコンの受光部がマイクと同じ位置にあり、明らかに演奏者が録音機を操作するためのものとなっています。しかし、野鳥録音の場合、マイクの方向とは逆の位置に操作する人間がいることになります。そのため、W24の受光部は理想の位置にあり、野鳥録音でも使えます。
 スピーカーは、録音されているのか確認を簡単にできるものとしてはありがたい装置です。現状の再生ボリュームを最大にして野外で流しても野鳥が反応することはありませんでした。野外で流しても鳥に影響のない音の大きさですので、安心して確認することができます。
オートレベルコントロール(ALC)は、実際には設定しないで録音しています。なぜなら、同時にバックの音もボリュームが下がり不自然な音の流れになってしまうと思ったからです。考えてみると、放置録音やタイマー録音で”運良く”野鳥が近くで鳴いてくれた場合、音が割れて使い物にならないより、ALCを設定しておいて、とりあえず録れていたほうが良いことがわかりました。後でバックに使える部分の音源とミキシングすれば、自然な音に仕上げることも可能だからです。今後、検証してきます。
 ホールドは地味な機能ですが、重要です。W24、C24とも起動が速いのでスイッチを切る、あるいはオードパワーオフを60秒程度に設定しています。ですから、作動中の誤操作を避けるためにホールドをかけることはありません。使用するのは、タイマー録音や放置録音で、設定変更の必要のない録音の時です。また、両機ともスライドスイッチを採用しています。H2のようにスイッチ長押しだと、時間がかかります。早く解除して、チャンスをものにしたい時はスライドスイッチのほうが有利です。

17.価格
 2010年11月現在の実勢価格は、W24が2万円台、C24が1万円台です。同程度の機能を持つメモリー録音機としては、安いほうだと思います。
 趣味レベルで野鳥録音を始めようとした場合、価格は機種選択の重要なポイントとなります。バードウォッチングに必携の双眼鏡は、1〜30万円台まで幅広く機種がそろっていますが、初心者は1万円台の双眼鏡を最初に購入してしまいます。
 これから野鳥録音をしてみよう、でもできるかどうか分からない、難しくて途中で投げ出すかもしれない、でも2万円ならばやってみるか、と言う人にとっては、W24、C24とも手を出しやすい価格であると思います。
 また、野鳥録音をすでに行って方は、バックアップ機として気楽に購入できる価格であると思います。さらに、研究者が多数の音源サンプルを収集しようとした場合、複数台を購入にて活用することも可能な価格であると思います。


おわりに
 野鳥録音は、大きなパラボラと大きな録音機を担いで行う苦行を伴うものだと思っているベテランのバードウォッチャーに会ったことがあります。また、1970年代の生録ブームにパラボラとカセットレコーダーで野鳥録音を試みたベテランも少なくありません。この当時の生録では編集ができず録ったら録ったまま、「ガサゴソ」いうノイズがあれば取ることができず、多くの人が挫折しました。私もその一人です。
 そして現在、YAMAHAのW24やC24のような簡単便利、軽量安価な高性能メモリー録音機の登場で、野鳥録音もずいぶん簡単便利になったものです。数万円で、これだけの機能が搭載された録音機が入手できるのですから時代は変わったと思います。
 いわば、野鳥録音を行うためのハードの環境は整ったと言えます。しかし、この情報がまだバードウォッチャーのなかに浸透していないのは残念なこと。ぜひとも一人でも多くのバードウォッチャーに野鳥録音の素晴らしさを体験してもらいたいと思います。              (2010年12月1日起稿・松田道生) 
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