PCM-D1使用リポート
その2
−録音の実際


はじめに
 PCM-D1を自然のなかに持ちこみ、実際に録音しての報告です。いくつかサンプル音源もアップしています。音源はフィードイン、フィードアウトをかけている以外、録音したままで加工をしていません。また、圧縮もしていませんので大きなファイルになっています。ローバンドの方は、一度ダウンロードしてからお聞きください。なお、96kHz 24bitで録音したものは、再生ソフトが対応していないと聞くことができません。メディアプレイヤー、iTunesなどでは聞くことができません。あらかじめご了承ください。


1.使用機種と比較機種
○ソニー リニアPCMレコーダ PCM-D1
    シリアルナンバー:A100310
○ソニー DATレコーダ PCM-M1
    シリアルナンバー:532296


2.使用場所
 東京都文京区 六義園
 東京都江戸川区 葛西臨海公園
 栃木県日光市 五葉平
 栃木県藤岡町 渡良瀬遊水池
 など


3.初期設定
 Powerスイッチをスライドさせると、約10秒で録音可能になります。最初のときは「SET CLOCK=時間設定せよ」という指示ができます。MenuからTimeを選んで設定します。
 この他、Menuから設定しておく必要があるものがあります。まずは、サンプリング周波数です。設定は
22,05kHz 16bit
44,1kHz 16bit(工場出荷の設定)
44,1kHz 24bit
48kHz 16bit
48kHz 24bit
96kHz 16bit
96kHz 24bit
 の7種類が選べます。初期設定は「44,10kHz 16bit」となっており、設定しないでおくと、いわゆるCDと同じサンプリング周波数になります。
 私の場合、後で述べるように自然音では「96,000kHz 24bit」の違いが顕著でないこと、ファイルが大きくなり扱いが面倒なことなどから、今のところDATと同じ「48,000kHz 16bit」に設定して使用しています。
 LimterのON、OFF。普通、アナログのLimterでは、音を感じてから反応して音を減少させます。そのため、音が歪むことがあります。しかし、本機ではたえず20dB低い音を陰で録音しており、急激な音になった場合、対応しています。これは、なかなか有効な機能で、後述のように実際に効果があることを実感しています。そのため、私の場合、LimterはONに設定しています。
 200Hz HPFのON、OFF。これは、200Hz以下の音にフィルターをかけて録音しない、いわゆるローカットの機能です。ツツドリはもとよりサンカノゴイやミゾゴイなど、低い鳥の声は200Hz以下の要素もありますので、この機能をONにしておくと、録ることができないか不自然な声になってしまいます。私の場合は、OFFに設定しています。
 SBM(Super Bit Mapping)のON、OFF。これは、サンプリング周波数を16bitに設定した場合のみ有効でノイズを軽減するという機能です。この効果の検証はしていませんが、とりあえずONにしています。
 LEDの設定。これをONにしておくと、アナログメータのピークで赤、適切で緑のランプの点灯。REC、PLAY、PAUSEのボタンを押した場合、ボタン内のランプが点灯し動作状況がわかるという設定です。動作状態は液晶画面でもわかるのですが、より視認性のよいLED設定のほうが、わかりやすくONに設定しています。ただし、バッテリの消耗がより大きくなります。
 この他、MEMRYでは、データの保存を本体内蔵のメモリ(BUILT-IN)を使うか、MEMORY STICKを使うのかの設定をします。MEMORY STICKを差し込んでいなければ自動的にBUILT-INになります。
 最後にFOLDERの設定があります。FOLDERは10個用意されており選ぶことができます。現状では1以外に設定する以外、必要を感じませんので初期設定のままFOLDER-01になっています。
 これらの設定は、MENUボタンを押すと液晶画面が設定画面となり、早送りと早戻りボタンで選び、PLAYボタンで決定するということになります。MENUの階層は、浅く簡単で設定するのは難しくありません。


4.録音の操作性
 さて、いよいよ録音の実際です。現状では10日間くらい持ち歩き、4,5時間分くらいを録音をしています。ただし、この時間のなかには、内蔵マイクと外付けマイクとの比較、DAT(PCM-M1)との比較など通常とは違う使い方をしています。
 まず、内蔵マイクを用いての録音では、簡単であるということと鳥に影響を与えることが少ないので、より鳥が近くにやって来るというメリットを感じました。というのは、外付けマイクを使えば、スイッチを入れマイクを差し込み、マイクを置くという動作が必要です。これは、時間をロスするばかりではなく、今まで身体を動かすことで鳥を警戒させて遠ざけてしまっていたことに気がつきました。とにかく、POWERスイッチをスライドさせRECボタンを押し、音が来ていることを確認してPAUSEボタンを解除するという動作はたいした動きになりません。そのまま、PCM-D1を手に持って木にもたれていると、ミソサザイがどんどん近づいてきてくれました。いずれにしても、簡単な操作はチャンスを逃すことなく鳥の声を録ることができます。

ミソサザイ(10秒1,876kbytes)
収録年月日:2006年3月20日
収録場所:栃木県日光市滝尾神社
録音メモ:48kHz 16bit Stereoで録音。ローカットは入っていない。

ミソサザイの声は高音域まで広がっている

 また、人に対しても録音をしているように見えないこともありがたいときがあります。秋葉原の電気屋のオジさんも「何の測定器ですか?」と聞くほど、録音機にはみえません。街角や公園で野鳥の声を録音していても、何かの検査をしているくらいにしか見えないと思います。
 STOPボタンを押して録音を終了すると、ACCESSランプが数秒点灯(MENUのLEDがONの場合)して終了します。これは、どんな長時間、録音してもACCESSランプの点灯時間は短いので、メモリに書き込んでいるのはなく単に終了作業を行っているだけのようです。
 録音中にPAUSEボタンを押すと一時停止状態になります。PCM-M1の場合、そこでトラックNo.が打たれますが、PCM-D1の場合は一つのファイルとして連続して録音されます。ですから、あとでどこでPAUSEをかけたかはわかりません。
 また、POWERから起動するよりHOLDスイッチ入れておき解除した方が、より早く録音することができます。野外で録音モードに入ったらHOLDをかけておいたほうが、録り逃すことは少ないことでしょう。


5.内蔵マイク

 内蔵マイクを使用しての録音では、まず音が大きいと感じました。DATのPCM-M1にAT825Nを付けて同じ方向に向けて比較してみると、PCM-M1でボリュームのメモリが10(いっぱいに上げた状態)とPCM-D1のメモリを5〜6くらいにすると同じくらいのレベルになります。
 PCM-D1にAT825Nを取り付けて録音状態にすると、同じレベルを得るのには、やはりボリュームのメモリを10まで上げなくてはなりませんので、マイクアンプの性能よりマイクの性能に起因してのことでしょう。
 マイクから音が大きく録れるということは、遠くで鳴く鳥や小さな声で鳴く鳥の声を録るためにはたいへんありがたい機能です。小さく録れた音をコンピュータで増幅することは可能ですが、歪んだり音が変質することもあり限度があります。まずは大きく録音しておけば、後で加工が楽です。ですので、通常の録音ボリュームのメモリは6くらいにしています。
 さて、肝心の内蔵マイクの音。マイクの音に関しては個人の好みもありますし、録る対象によっても違います。私の音の評価は、いかに自然に聞こえるかです。たとえば、山で聞いたウグイスの声を録音して、家で再生しても自然の中で聞いたものと同じように聞こえるかという価値判断です。鳥の声は、高い音が多いので高音域が歪んでいたりしていないか、倍音がきちっと録れているかということになります。また、自然の中のノイズ、ホワイト・ノイズ、低音が強調されていないかなどとなります。ということは、高音域も低音域もクセのないバランスで、録れる、再生できなくてはなりません。
 実際に録音した鳥の声を聞いてみると、前掲のミソサザイの声はほぼ自然に聞こえます。つぎに、上げるウグイスはいかがでしょうか。

ウグイス(5秒938kbytes)
収録年月日:2006年3月21日
収録場所:栃木県渡良瀬遊水池
録音メモ:48kHz 16bit Stereoで録音。ローカットは入っていない。

 少し高音域が強調されていて、ウグイス特有の丸みのあるまろやかさが損なわれている感じがします。硬い感じもします。どうも、ウグイスの「ホー」あたりの2000Hzあたりの音が強調されているようです。また、7000〜9000Hzの音が薄く、このあたりにある倍音が弱いことが、まろやかさがなくなった感じに聞こえるようです。
 音域全体にノイズのあるものをスペクトログラフで見ると、ところどころ、音が薄い音域があるのがわかります。他のマイクでも大なり小なりあるのですが、このマイクでは7000〜9000Hzが薄いことがわかります。人の声や楽器では、あまり関係のない音域ですが鳥の声では不自然になる可能性があります。
 ただし、これは比較の問題で、好みにもよりますし気にならないといったら気にならない程度の音の違いかもしれません。
 内蔵マイクは、ステレオです。マイクのカプセルを内側に向き合わせるという設置の仕方をしています。これにより、ナカヌケがしないというメリットがあると思います。ただし、聞く限りステレオ感はあまり感じませんでした。波形で見ると、左右の音の違い顕著に出ていないことがあります。次の項であげたヒガラは右側で鳴いているので右の波形が大きくなるはずです。PCM-M1のほうが、左右の波形の大きさの違いが大きく、PCM-D1では差が少なく見えます。そのため、ステレオ感をあまり感じません。
 ほぼマイクカプセルがむき出しのことで、風の影響を受けやすそうだということは”その1”で、のべました。たとえば、AT825を分解してみるとカプセルはスポンジのなかにあります。それすらないのですから、少しの風の音でも「ボ、ボ」と入ってしまいます。付属の風防の効力も少なく、もしPCM-D1で野外録音をするのであれば別にウインドジャマーを用意したほうがよいでしょう。


6.外付けマイクでの録音
水音を録音した環境の状況

 PCM-D1のマイクプラグは、ステレオミニです。私のAT825Nにミニプラグのコードを付けて使用してみました。また、比較のためにPCM-M1にAT825Nをつけて録音した音も並べてみました。聞き比べてください。
 なお、本体のマイクプラグにプラグを差し込むことで、自動的に内蔵マイクから外付けマイクに切り替わります。

PCM-D1の内蔵マイクで録音した水音(5秒938kbytes)
収録年月日:2006年3月20日
収録場所:栃木県日光市五葉平
録音メモ:48kHz 16bit Stereoで録音。ローカットは入っていない。ウインドジャマー使用。

PCM-D1にAT825Nをつけて録音した水音(5秒938bytes)
収録年月日:2006年3月20日
収録場所:栃木県日光市五葉平
録音メモ:48kHz 16bit Stereoで録音。ローカットは入っていない。ウインドジャマー使用。

PCM-M1にAT825Nをつけて録音した水音(5秒934kbytes)
収録年月日:2006年3月20日
収録場所:栃木県日光市五葉平
録音メモ:48kHz 16bit Stereoで録音。ローカットは入っていない。ウインドジャマー使用。

 内蔵マイクと外付けマイクの音の違いはわかると思います。また、PCM-D1、PCM-M1ともAT825Nを使用すると、ほとんど違いはわかりません。
 なお、PCM-D1はプラグインパワーに対応していないので、マイクによっては使用できません。また、ダイナミックマイクロホン(サンケンMS-7C)も音が小さく使い物にはなりませんでした。


7.リミッター
ヒガラの声を録音した時の環境

 リミッターは、たえず裏で20dB低い音を録音しているというデジタルならではの機能を発揮しています。つぎにあげるヒガラの声は、PCM-D1とAT825N(PCM-M1で録音)を並べ、近くに来たヒガラが鋭い声をあげたときのものです。

PCM-D1でリミッターをかけて録音したヒガラ(3,3秒619kbytes)
収録年月日:2006年3月25日
収録場所:栃木県日光市奥五葉平
録音メモ:48kHz 16bit Stereoで録音。

PCM-M1でリミッターをかけていないで録音したヒガラ(3,3秒619kbytes)
収録年月日:2006年3月25日
収録場所:栃木県日光市奥五葉平
録音メモ:48kHz 16bit Stereoで録音。

ヒガラが近くまで来て鋭い声をあげていった

 この他、ベランダに置いたPCM-D1の前でヒヨドリが鳴いた時も、音が歪むことなく録音されていましたので、リミッター効果は評価できます。


8.高品位録音−サンプリング周波数による違い
 現状では、48kHz・16bitと96kHz・24bitで同じ状態で録音したものを紹介します。

96kHz・24bitで録音した水音(5秒2,825kbytes)
収録年月日:2006年3月21日
収録場所:栃木県渡良瀬遊水池
録音メモ:96kHz 24bit Stereoで録音。

48kHz・16bitで録音した水音(5秒938kbytes)
収録年月日:2006年3月21日
収録場所:栃木県渡良瀬遊水池
録音メモ:48kHz 16bit Stereoで録音。

 この違いがわかるでしょうか。私がコンピュータに設置している30wのスピーカ(ローランドMA-150U)では、この違いを表現することができません。ただし、bytes数は約3倍になってしまいます。そのため、読み込みや編集にも時間がかかります。96kHz・24bitなど、高品位で録音するメリットは、今のところ見いだせないでいます。


9.バッテリ
たったこれだけのセットで、野鳥録音が楽しめる
 バッテリは、付属のニッケル水素電池の他、手持ちのものを使用しました。単3電池4本をカートリッジに入れて本体後部のスロットに差し込みます。この電池室の蓋のロックが甘く、すぐに開いてしまうのが難点です。Web上の他の報告でも、三脚が倒れて電池室の蓋が開いて電池が飛び出して録音に失敗したという事例がありましたから、注意が必要です。
 バッテリの消耗状態は、液晶画面により3段階で表示されます。マニュアルには、96kHz 24bitで「約4時間」、44kHz16bitで「約5時間」と書かれています。私のように、48kHz 16bitで録音した場合、少なくとも4時間、だいたい4時間半くらいは録音できるものと思われます。しかし、実際の録音時間は極めて短くカタログ通りではありませんでした。
 正確にバッテリの消耗時間を計り比較することはできません。まず、ニッケル水素電池の劣化やそのたびごとの録音の方法、気温など環境の違いが考えられるからです。
 しかし、実際に録音していると、20-30分ほど録音した状態で1段階減り、30-40分で電池交換が必要な表示となりました。LEDの点灯がバッテリの消耗を早めていると思い消灯しましたが、それほど変わりありませんでした。
 ただ、自宅マンションのベランダにPCM-D1を置き長時間、録音状態にした場合は、1時間たっても表示が変わりませんでしたので、私のように待機状態が多いこと、点けたり消したりを頻繁に行う録音の方法では、バッテリの消耗が極めて早くなるようです。
 なお、ベランダでの録音は、冬の早朝で気温5度程度の環境です。そのため、日光や渡良瀬遊水池で録音したときと気温は変わらないか、より低い状態と思われ、低温による影響ではないと思います。
 なお、PCM-D1には内蔵のバッテリは入っていません。そのため、バッテリ交換を素早くしないと、時計の時間をはじめサンプリング周波数などの設定がリセットされてしまいます。(2006年4月3日・起稿)