PCM-D1使用リポート
その1−外見と機能

その2録音の実際
その3−再生と編集



その1−外見と機能



はじめに

 DATなき後、どうやって生きていったらよいのか野外録音を趣味にしているものにとっては、まさに死活問題です。
 次世代の録音機と言われるメモリレコダーも各メーカーから次々に発表されていますが、いずれも帯に短し襷に流しの感があります。そんななか、ついにソニーからPCM-D1が発売となりました。ネット上では、性能よりかデザインされたアナログメータや内蔵マイクの必要性が話題となるという面白い現象を巻き起こしました。
 また、ソニーのカタログやサイトでは「鳥のさえずりや虫の音などの自然音や楽器演奏の高音質録音に最適な・・・」と銘打っています。では、本当に野外の使用に耐えうるでしょうか。たいへん気になるところです。
 このたび、PCM-D1を購入いたしましたのでリポートします。
 野外での使用に耐えうるかどうかの判断は、1年間使いとおしさまざまな条件下、とくに極寒から猛暑を体験してからでないと本当のところはわかりません。今回は、まずは手にとっての感想です。私のつたない経験からの判断と意見となります。
 購入を考えいる方のご参考になれば幸いです。


1.使用機種と比較機種

○ソニー リニアPCMレコーダ PCM-D1
    シリアルナンバー:A100310
○ソニー DATレコーダ PCM-M1
    シリアルナンバー:532296


2.セットと本体の外装

 セットの中心は、本体、三脚、ストラップ、そして本体と三脚を入れる布製のキャリング・ケースです。この他、スポンジのウインドジャマー、USBコード(ミニ)、CD-ROM(音の編集ソフトのDigion Sound5 Express+Win2000用のドライバーなど)、ACコード、メモリースティックアダプター、単3のニッケル水素電池4本と充電器、さらに電池ケース、マニュアルや登録ハガキです。これらが、本体に比べて大きめの箱に二段重ねに入っています。
 PCM-D1の外見は、やや灰色がかった黒の表面と裏面に、周囲を銀色で縁取りがされているという配色です。見た感じは、高級感があり安っぽい感じはしません。銀色に輝く目立つ部分が比較的少ないので、自然のなかに持ち込んでも違和感のない配色といえるでしょう。ただ、前方にある内蔵マイクが銀色なので、かなり目立ちます。これを突き出すことで野鳥に警戒心を起こさせないか心配です。この銀色のマイクを隠すためにも風防を常時装着することになるでしょう


3.重さと大きさ

 手に持つと思った以上にずっしりと重く感じます。しかし、ストラップを付けバッテリーを入れ重さを量ってみると、わずか525gでした。DATのPCM-M1(バッテリー+ケース)は、400gですのでDATウォークマンより重いことになりますが、PCM-M1にマイク(AT825N+コード+ウインド・ジャマー)をセットすれば790gとなりますから、内蔵マイクを使えばPCM-D1のほうが軽いことになります。
 また、私が使用している双眼鏡のうち、スワロフスキーEL8.5×42は950gありますし、EL8×32でさえ725gありますから、中型の双眼鏡よりも軽いということになります。
 手にすると、私のような小さな手ではやや持ちにくい大きさです。計ってみると、幅が約7cm、厚みが約3cmありました。DATのPCM-M1は、幅が約8.5cmと1.5cm広く、厚さが5mmほど薄い2.5cmでした。持った感じでは、厚みのあるせいで持ちにくくなっているようです。また、長さはPCM-D1が内蔵マイクを入れて19cm、PCM-M1が12cmと縦に長いために、より大きく感じます。
 なかなか大きさや重さのたとえに良い物がないのですが、ゲーム機のプレイステーションポータブルに大きさは似ています。あるいは、PCM-M1を1.5倍程縦に長くして少し細くした感じといったところでしょうか。
 いずれにしてもPCM-M1と比べて大きいとはいえPCM-M1がもともと小さいのであって、PCM-D1はウエストポーチに入れて持ち運び、野鳥が鳴いていたらすぐに取り出して録音することができる適度なサイズといえるでしょう。また実際は、外付けマイク、予備のバッテリーなどの備品をいっしょに持って行かなくはなりませんが、DATに比べて予備のテープがいらない分が軽減されることを考えると、装備的にはPCM-M1のときとほとんど変わることのない重さと大きさとなります。ということは、山歩きをしながらの録音でも十分に持って行ける大きさと重さ、負担にはならないサイズといえます。


4.操作性

 バッテリを入れ右側のPOWERスイッチをスライドさせれば、すぐに起動します。最低限の初期設定としては時計を合わせるだけでした。設定は、MENUボタンを押して呼び出して、ENTERがPRAYボタンが変わりをしているなどを覚えてしまえば、これも簡単だと思います。いちばん使用する可能性の高いMENUは、ファイルの削除でしょう。この他、サンプリング周波数はときおり変える可能性がありますが、その他の設定は一度決めれば変更をすることはないでしょう。
 実際にパワーを入れて録音可能な状態になる時間を計ってみると約10秒かかりました。PCM-M1はかなり遅い感じがしますが約15秒です。わずか5秒の差ですが、かなり早い印象を与えてくれます。実際はPCM-M1では、マイクを装着したりするのでもっと時間がかかります。内蔵マイクと素早い起動で、鳥の声を録りはぐれることが少なくなることでしょう。
 録音、再生、早送りなどのボタンは、テープレコーダーの時代から変わらないマークと操作ですので、戸惑うことはないでしょう。ボタンの押しの深さ、反発力も適度であり違和感はありません。
 録音ボリュームは、右側に付いている大きめのダイヤルで調整します。2枚になっていて、左右別々に調整可能です。左手に持って右手で細かい作業ということで、右利きにはありがたい配置です。


5.内蔵マイク

 PCM-D1のデザインで際だっているのが、この内蔵マイクでしょう。多くのレコーダの内蔵マイクというと本体に穴が空いているだけのものでしたが、当機ではむき出しでそれも左右が向かい合っているという配置には意表をつかれます。
 ただ、野外で使う者にとっては、アーチ型の金属製のガードがあるとはいえむき出しのマイクは不安を感じます。実際に使用する時は、マイク保護のために付属のスポンジの風防を常時付けたままで使用することになると思います。
 このマイクは、3段階で角度を変えることができます。そのクリック感がとても心地よく感じます。


6.モニター(アナログメーター+液晶)


 マイク以上にデザインで素晴らしいのが、アナログメータです。左右のレベルをこれでモニターすることができます。往年のデジタル録音機についていたメータを思い起こさせるデザインです。さらに、LIGHTを点灯すると温かい黄色みを帯びた光が、より生録心をくすぐります。まだ薄暗い山の朝、ほの明るいアナログメータが野鳥の声と同調しながら針が震えるのかと思うとわくわくします。バッテリの消耗を防ぐためLIGHTの点灯はしない方針なのですが、予備のバッテリをたくさん持って行っていつも点灯しておきたくなります。
 液晶画面でも左右のレベルが2段になって表示されるのですが、やはりアナログメータを見てしまいます。
 液晶画面は、モノクロで録音時は左右の録音レベル、ピークのdbの数字、ファイル名、サンプリング周波数、電池残量、操作状況が表示され、現在の時間、録音した時間、残りの録音可能時間の3パターンがDISPLAYボタンを押すことで表示を変更することができます。液晶画面のコントラストは、はっきりしていて視認性は高く、日向でも見えにくいことはありませんでした。


7.端子と切り替えスイッチ類

 外付けマイクの端子、ヘッドホン端子は前方右側。デジタルOUT、IN、USBは前方左側に付いています。この他、DC INが左後方にあります。
 マイク端子がもっとも前方、その後方にヘッドホン端子があることで、コードがこんがらかることはないでしょう。
 切り替えスイッチは、MICとLINE INが右前方、POWERが左後方、MIC ATTが左前方、HOLDが左後方にあります。
 これら端子の穴がむき出しなのが、多少不安です。砂ホコリの多いところや霧雨のなかでの使用は、これらの穴から内部にほこりや水分が入りそうです。端子には蓋があるとありがたかったと思います。
 また、少なくともいちばん使用頻度の高いPOWERスイッチは、他のスイッチに比べて多少大きくした方が、わかりやすく使いかってがよかったのではないでしょうか。


8.風防

 風防は、内蔵マイクに被せるようにして装着します。風防のプラスチックの枠が、本体の金属部分にカッチと快い音を立ててとまります。スポンジの木目は細かいのですが、薄いために風防効果はあまりありません。前述のようにマイクの保護と目立つマイクを隠すために、使うというのが実際でしょう。
 試しに、私のマイク(AT825N)のスポンジを付けてみたところ、ややきついもののなんとか装着することができました。さらに、ウインドジャマーを被せると風防効果は大きく、こもる感じありませんでしたので、これからはこれで行くことになると思います。ただし、ウインドジャマーを被せると、アナログメータが隠れてしまうのが残念です。

ウインドジャマーを付けることができるが、
アナログメータが隠れてしまう。



9.三脚

 同梱の三脚は、長さが約20cmの小型のものです。これに、PCM-D1を装着して使えということなのでしょうが、本体が重いのと大きいことで安定性があまりよくありません。ちょっと凹凸のあるところへ置くと倒れてしまいます。もっと脚が開かなくては、自然のなかでは安定しません。野外では地面が平であることはまずないので使用することはないでしょう。開発者は、コンサートホールの床に置く程度のことで考えたようです。
 ただし、マイクホルダーを付けて外付けマイクを付けるとPCM-D1よりマイクの方が軽くて長いために安定するのでマイクスタンドとしては使えます。
 また、本体を装着したままグリップしての使用もマニュアルでは示唆していますが、内蔵マイクの感度がよいのでグリップノイズは避けることはできず、使用にたえませんでした。


10.ストラップ

 右下にストラップを通す受けがあり、25cmほどのやや長めのストラップを通すことができます。ストラップは、長いばかりではなく、かなりしっかりした造りになっています。
 マニュアルでは、ストラップの隙間に外付けマイクのコードを通してコードがはずれるのを防ぐことになっていますが、この効果のほどはやや疑問です。少なくともマイクは、前方に向けているのですから後方にあるストラップの隙間にコードを通すとことはありません。
 基本的に手持ちで録音する時に、ストラップを腕に通すことで手から滑り落ちることを防ぐということなるでしょう。

11.キャリング・ケース


 キャリング・ケース(「2.セットと本体の外装」の写真の左)には、本体と三脚が入り、バッテリ、メモリなどが入るポケットが外に付いています。また、ベルトに通しと吊すためのリングが付いています。
 キャンバス地は厚くスポンジも入っているようなので、リュックに入れて持ち運ぶときにショックが伝わることが少ないことでしょう。
 ただし、これでベルトに付けるには、大きく重いことになり、相当体格のよい方でないとジャマになること思います。
 どちらかというと、PCM-M1のような密着したケースが欲しいと思います。そのほうが、本体を傷つけることなく保護することができるように思います。
 実は、左右に開いているLINE INのプラグの穴からヘッドホーン端子の穴を通して、向こうの景色が見えるのです。かなり隙間が多い構造なので、ホコリや砂が入る可能性があります。また、メモリスロット、バッテリ室の蓋のしまりが悪く簡単に開いてしまいます。これを防ぐためにも密着したケースが欲しいと思います。
 当面は悪条件の環境下では、ビニール袋で全体を覆って使用することになるでしょう。


12.価格


 PCM-D1は、オープン価格です。発表当時20万円という販売価格がリリースされました。2006月3月現在は、おおむね20万円から10パーセントポイントがついて18万円というのが実勢価格となっています。私は、本体価格165,000円+消費税8,250円+代金引換手数料1,260円+送料735円=合計175,245円で入手いたしましたので、少し安いかなという価格でした。
考えてみると、私がPCM-M1を買った時の価格は9万円、それにマイクが7万円、マイクコード5,000円、さらにテープがいるのですからPCM-D1の価格とそう変わらないことになります。また、現状では性能的が近いPMD670が実売12万円で販売されています。しかし、PCM-D1と同等にするために4GのCFカードとマイク、さらに付属のニッケル水素電池と専用充電器を購入すれば20万円を越えてしまいます。考えようによっては安いかもしれません。
 たしかに18万円は趣味で購入するには高いかもしれませんが、バードウォッチャーの多くが外国製の高級双眼鏡に20万円以上を投資していることを考れば、これまた安いと思う金額かもしれません。
[ロケ地:六義園、葛西臨海公園]
(2006年3月12日起稿)