フジプランニング製パラボラ+マイク
LISN使用リポート



その2−音

1.音質

  私の音の評価は、いかに自然に録れるかにかかっています。自然のなかで録音をしながら聞いた音が家のスピーカーから聞こえれば、OKです。グランドノイズが大きく入っていたり、高音が不自然に強調されていないかというのがチェック項目です。
 また、録音された音源はマイク性能のみならず、録音機のマイクアンプの性能によってかなり違ってきます。今まで使い慣れてきたマイクのAT825NとDAT録音機のPCM-M1との組み合わせとの比較、録音機を変えずマイクをLISNに変更しての比較にならざるをえないことをはじめにお断りしておきます。
 さて、LISNのマイクは自然な感じに録れます。ある意味、パラボラ特性の柔らかさはあまり感じられません。このあたりの評価は、好みもあると思いますので難しいのですが、多少高音域が強いように思えます。たとえば、波の音やカモが着水する時の音が、「バシャン」ではなく「パシャン」と聞こえることがあります。
 ただし、高めのキビタキ、高音のヤブサメなどの声が、不自然に聞こえることはありませんでした。そのため、この程度の違いは録音状態によったり好みの範囲内かと思います。
 自然の音、とくに野鳥では同じ条件での機種の比較がとても難しいのです。たとえば、2機種を操作しながら同時に録音すると、その動きで鳥が逃げしまいます。鳥が移動してしまえば距離が変わってしまうので、正確な比較ができません。いくつか、同じような条件で録音できましたので聞いてみてください。
 サンプル音源は、PCM-M1を使用して録音しています。このときの録音ボリュームは4〜5です。編集は、フェードイン、フェードアウト、全体にかかるプチノイズの削除以外、無加工です。ファイルはwev。サンプリング周波数は48.0kHz16bit。秒数は3〜5秒と短いもののファイルは大きいのでご注意ください。

○LISN+PCM-M1とPCM-D1との比較
LISNによるキビタキ
収録年月日:2006年5月5日
収録場所:栃木県日光市五葉平
PCM-D1によるキビタキ
収録年月日:2006年5月5日
収録場所:栃木県日光市五葉平
録音メモ:高い音の代表。鳥との距離は約10m。かなりよい条件での録音です。
○LISNによる高音と低音の比較
ヤブサメ
収録年月日:2006年5月4日
収録場所:栃木県日光市五葉平
録音メモ:クロツグミを録音していたら近くで鳴いたもの。距離は約10m。倍音まで録れています。
ツツドリ
収録年月日:2006年5月4日
収録場所:栃木県日光市五葉平
録音メモ:低い音の代表。鳥との距離は、50m以上あると思われます。ただし、これは試験用のモノラルマイク。
○比較のための音源−ウグイス
LISN+PCM-M1
収録年月日:2006年5月4日
収録場所:栃木県日光市五葉平
PBR-330+サンケンMS-7C+PCM-M1
収録年月日:2006年5月3日
収録場所:栃木県日光市五葉平
AT825N+PCM-M1
収録年月日:2006年5月3日
収録場所:栃木県日光市五葉平
PCM-D1(内蔵マイク)
収録年月日:2006年5月4日
収録場所:栃木県日光市五葉平
録音メモ:録音日時は異なりますが、場所は同じで同じ個体と思われるウグイスです。


2.集音効果

 マイク性能のせいか、音はかなり大きく録れます。そのため、そうとう集音効果があるように感じます。
 AT825Nの指向性に比べて、より鋭角である感じでもあります。そのため、パラボラを向けている方向以外の音はかなり軽減されて、目的の音をとらえ強調することができるのは、うれしい限りです。たとえば、葛西で池のカモの声を録っているときに、パラボラの後ろ10mほどのところを歩く人の足跡は、耳に聞こえる音よりかはるかに小さい音に録れていました。パラボラを持って、いろいろ角度を変えるとグランドノイズが急激に変化していくので、かなり指向性が高い印象がありました。
 また、PCM-D1の内蔵マイクは感度が良く、ヘッドホーンを付けて、マイクの後方1mほどにいても、衣擦れや鼻息の音はもとより、誰かがいるなという”気配”が録音されてしまいます。それに対し、LISNはより感度が良いのに関わらず、パラボラが音を遮断しているので、気配を感じることはありませんでした。

3.ステレオ感
 ステレオ感の評価もなかなか難しいものです。自然のなかで、左右にうまく分かれて音源があると良いのですが、なかなかそういった場面はありません。また、鳥が鳴きながら右から左に移動してくれたら、これもマイク性能をチェックできるのですが、これまたそんな機会はなかなかありません。
 実際の録音では、葛西の淡水池に浮かぶカモの群が鳴いている状況(写真上)では、左右で鳴いている感じは録れましたので、ステレオ感は良好だと思いました。左右の音の分離は、自然です。
ホシハジロ
収録年月日:2005年12月21日
収録場所:東京都江戸川区葛西臨海公園
録音メモ:池に数100羽のカモ類、おもにホシハジロがいて、水浴び、鳴き合っていたようす。

4.風防

 風に弱いと思われるパラボラです。しかし、思いの外、風に強いことがわかりました。パラボラが風を避けていることと、マイクを覆っているスポンジの効果だと思いますが、直接マイクに風が当たっても「ボ、ボ」という風の音が入りにくいことがわかりました。ミヤコザサが「ガサガサ」鳴るような状況であっても、風の音を拾わないのには驚きました。
 ただ、パラボラ自体がある程度の大きさがあるので、風を受けて倒れてしまうことはありました。
 また、風防がなかったので、PBR-330に使用していたタイツをカットした手製のものを使用してみました。多少の効果があったように思えます。

マイク用のジャマーを取り付けてみました。効果の検証は難しいと思いますが、効果はあることと思います。

7.LISNのための録音機の選び方

 まずは、手元にある録音機に接続してみましょう。カセット・テープ、MD、あるいはボイスレコーダーやMP3レコーダーなど、接続してみてください。多くは、録音可能です。ウグイスやシジュウカラのさえずりを録音するができることでしょう。
 ただし、カセット・テープですと、高音域は約10kHzまでで10kHz以上の要素のあるヤブサメの高音部分が録れません。他の鳥でも倍音が録れないために本来と鳥の声と違って聞こえたり、ふくよかな音質を再現できないことあります。MD、ボイスレコーダー、MP3レコーダーも同様です。
 できたらPCM録音が可能の録音機、ファイル形式がwavとなる録音機がお勧めです。また、サンプリング周波数が44.1kHz16bit(CD音質)以上で録音可能な機種がよいでしょう。現状では、DAT、Hi-MD、メモリー録音機で該当する機種が発売されています。DATが風前の灯火、Hi-MDは未知数、メモリー録音機は将来性がありますが、現状の機種は帯に短し襷に長しといったところです。
 リスンのマイクロホンはコンデンサーマイクロホンを使用しています。 電源は、録音機から供給される必要があり、プラグインパワー対応の録音機が便利です。たとえば、PCM-D1はプラグインパワー 対応でないために使用できません。そのため、フジプランニングでは、プラグインパワー非対応の機種のためにマイクと録音機の間に入れる電源ボックスを 用意する予定だそうです。
 LISNのマイクプラグは、マイク側録音機側ともステレオミニです。そのため、マイクINがステレオミニの形状である録音機であれば、そのまま差し込んで使えます。民生の多くの録音機はミニステレオですので、手持ちの録音機でまずはお試しください。また、Micro Track 24/96のマイクINは2系統あり、ひとつがステレオミニですので使用可能です。
 一部、プロ使用の録音機では、キヤノンコネクターで3ピン2口がマイクINです。たとえば、マランツのPMD-670やPMD-660などです。このような機種では、変換アダプターが必要となります。これについてもフジプランニングにおいて、制作中とのこと。
 お勧めの具体的な機種をあげておきますと、DATでは、TCD-D100、TCD-D8。Hi-MDではMZ-RH1、MZ-RH10、メモリー録音機では、R-09、R-1、Micro Track 24/96 などがあります。Web上での評判や実際に手に取ってみてお選びください。

後記
 現在、PCM-D1を入手したこともあって、LISNもいろいろ試したり試行錯誤をしています。
 LISNが軽くてフレキシブルな素材できているとはいえ、PCM-D1と比べれば三脚もいるので持って歩くのは重くてかさばります。そのため、森に入ったら鳥の声の多い方向にパラボラを向けて録音機を回し放しにして置いたままにし、PCM-D1を持って鳴いている鳥を探して録音をするということをやっています。こうすることで、短い野鳥のコーラスのピークを有効に録音できることになります。LISNのおかげで、目的と環境に合った使い分けができることになり、その機材の選択肢が一つ増えたことになります。
 また、LISNの集音効果はかなり良いので「なんだ、ウグイスしか鳴いていないなあ」と思って、ヘッドホーンを通して聞くと「遠くでオオルリが鳴いている、センダイムシクイもいる」と裸耳では聞こえない音が聞こえてきます。いわば、高性能の補聴器のようなものです。録音しなくても野鳥の声を鑑賞するためにもとても有効です。おそらく野鳥や野生生物の耳は、この機種ぐらいの精度があると思います。LISNによって野鳥や野生生物の聴覚を味わえることになります。
 同様にこの機能を活用することで、環境調査や野鳥の生息状況を調べるための機材としての活用が考えられます。たとえば、歩いてセンサスをして調べなくても定点にLISNを置いて鳥の声を聞けば、より精度の高い定性的な資料を得ることができます。こうして効率的に調査を行うことで、調査地域を広げたり、調査ポイント増やしたりすることも可能となるでしょう。また、あるいは、録音したデータを解析することによって、定量的なデータの収集も可能かと思います。
 また、夜行性の鳥は歩いて調査をすることは難しい場合があります。LISNにより、遠くで鳴いている鳥の声をチェックすることができるので、夜行性の鳥の生息状況を知ることもできるでしょう。
 いずれにしてもLISNは、アイデアしだいで活用の方法はいくらでもある便利な機種になると思います。(2006年6月1日・起稿)

追記
 LISNは、プラグインパワーに対応していていないためにPCM-D1には、音を送れないと書きました。その後、フジプランニングでは電池ボックスの制作を行い試作品が送られてきましたので追記いたします。
 実際に、PCM-D1に取り付けて見たところ、間違いなく使用できました。また、録音ボリュームも電池ボックスを使用しないでプラグインパワーの録音機(PCM-M1)と差を感じない大きさで入ってきています。
 電池ボックスは、単4電池2本使用。重さは約100g(電池含む)。大きさは、幅がほぼPCM-D1と同じために裏側にマジックテープで取り付けて使用するとよいでしょう。(2006年6月10日・追記)