フジプランニング製パラボラ+マイク
LISN使用リポート


その1.外見
その2.音




その1.外見



はじめに

 野鳥の声の録音というと大きなパラボラを構える姿が、いかにもそれらしく絵になります。私が、マイク1本とDATウォークマンを取り出すと「えっ、それだけなの?」と言われたことがあります。私は、機材を少なく軽くすることで、チャンスを逃さない録音に心がけてきました。
 パラボラは、音がやわらなく自然な感じに録れることには定評があります。野鳥録音の第一人者の蒲谷鶴彦先生は、パラボラの音の良さに引かれ長い間パラボラでの録音にこだわってきました。しかし、パラボラはかさばる機材のために山歩きでの録音には適しません。また、無指向性マイク1本でモノラルが基本です。ステレオ録音をするために、パラボラを2組用意しなくてはなりません。これでは、さらにかさばります。それ以前の問題として、ソニーのPBR-330はすでに廃盤、入手簡単なパラボラはないという状態です。
 今回のフジプランニングのLISNは、パラボラの部分を柔らかく薄い素材にすることでパラボラを自由な形して持ち運びができて、かさばるという難点がなかり軽減されています。そして、ステレオマイクとセットにすることで、パラボラ1組でステレオ録音を可能とした画期的な製品です。
 今回は、フジプランニング株式会社より機材の提供を受けてのリポートです。お借りした機材は、試作品のものと、私の指摘により改善された製品版の両方を使用しています。

1.使用機種
LISN・集音マイクセット
録音機:PCM-M1(DAT録音機)


2.比較マイクとパラボラ
・オーディオテクニカ製  AT845N(ワンポイント・ステレオマイク)
・ソニー製 PBR-330(パラボラ)+サンケンMS-7C
なお、私のPBR-330は目立たぬようにカーキの塗装が施してあります。本来は、透明です。
・PCM-D1(内蔵マイク使用)

3.使用期間
2005年12月〜2006年5月

4.使用場所
東京都文京区六義園
東京都江戸川区葛西臨海公園
千葉県船橋市船橋海浜公園(三番瀬)
栃木県日光市萩垣面・五葉平など

5.外見
1)パラボラ
 まず、メインのパラボラ部分。たいへんフレキシブルな素材でできています。そのため、扱いが楽で軽くなっています。フジプランニングが輸入販売しているスウェーデン製のテリンガも同じように丸めることができるパラボラということで定評がありましたが、小型なために、よりコンパクトにして持ち運べることができます。
 素材の厚さは、ソニーのPBR-330が約3mm、LISNは1mmもなく、それだけにヤワな印象を受けました。しかし、柔らかいために少し丸めてリュックに入れこともできます。たとえば、小型なディパックに入れて持ち運びができます。要するにパラボラの直径の37cm+数cmの高さがあれば、左右のサイズをあまり気にすることなく、入れることができます。むき出しのままリュックに入れ、隙間に衣類などを詰めて持ち運んでみました。日光行きの時は片道2時間30分、往復5時間余り変形させて持ち歩いたことになりますが、形状が変わることはありませんでした。三番瀬での取材のときは、他の機材とともにキャリアに入れてガラガラと引いて歩きましたが、問題はありませんでした。
 大きさは、PBR-330は33cm、LISNは37cmと一回り大きくなっています。しかし、硬質のPBR-330はがっちりと33cmのスペースを取るに対し、柔軟性に富んでいる本機は大きくてもかさばりません。
薄い反面、割れたりするような感じで弱そうです。しかし、日光では気温0度以下と思われる(積雪が溶けていない)の環境で録音を試み折り曲げたりしましたが、割れるようなことはありませんでした。
取り扱い上、思わぬ落下実験を行ってしまうこともありました。何度か手元から落としたりしましたが、割れるようなことはありませんでした。また、汚れが気になったので、食器用洗剤をつけたスポンジで軽く洗ってみましたが、問題なく汚れが落ちました。ただし、材質の柔らかさのためか細かい傷がついています。
2)マイク
 マイクは、軽く扱いやすいものでした。無指向性のマイクのカプセルが左右2個が、入っていることになります。
 マイクは、電池を入れたり、録音機との間にバッテリーボックスを入れる必要はありません。マイクのバッテリー管理まで気にしないですむことになります。ただし、録音機がプラグインパワーである必要があります(プラグインパワーに対応していない録音機の場合、電池ボックスが必要)。
 ステレオマイクには、真ん中を区切る透明のアクリル板がはめ込まれています。これにより、上下にマイクを設置することなく左右を分けて設置することができます。
3)グリップ
 私は、三脚に設置しての録音をお勧めしますが、時間がなくチャンスを逃さないためにとりあえずグリップを握っての録音という事態も多いことと思います。このグリップの太さ、長さ、材質とも、とくに問題は感じられませんでした。握りやすい素材で摩擦係数の感じも快く、手袋をしていても滑ることありません。
 ただ、垂直なのでバランスが少し悪い感じがします。ピストルのグリップのように、多少角度が付いていた方が楽な感じがしました。
4)コード
 コードの長さ170cmは、ちょうどよいと思いました。短いと録音機の操作音、身じろぐ音などが入ってしまいます。ステレオですから目的の鳥の声を中心に捕らえる録音であれば、パラボラのそばにいなくてはなりません。そのための長さとしては適切でしょう。コードは細めで扱いやすいと思いました。太いコードだとコードが曲がらず、パラボラをたおしてしまう危険性があります。ただし、細いコードは絡みやすいし断線しやすいので扱いを丁寧にする必要があります。
 マイクプラグは、ステレオミニプラグです。そのため、録音のマイクINが基本的にはミニプラグであると、そのまま使用できます。ミニプラグは、キャノン3ピンのようにカッチとノッチがかみ合わせるほどしっかりと組み込める形になっていません。ときおり完全に挿入されていないために音がこないというミスをする可能性がありますので、しっかりと差し込むよう注意が必要です。
5)三脚アダプター
 LISNは、軽いとはいえ実質中型の双眼鏡と同じ重さがあります。これを1分くらいならば手持ちができますが、1分以上となると私のような華奢な身体で持ち続けるのはつらいものです。持っていても持ち替えたり震えたりでノイズが入ってしまいます。後述のように、マイクの感度がよいだけにノイズが入りやすいのです。そのため、三脚に取り付けて使用することを前提にしたほうが、よいと思います。
 テリンガでは手持ちが原則と言うことで、三脚に取り付けることがあまり考えられていないようでした。きっと体格のよい欧米人を対象にした機材だったのでしょう。LISNは、最初から三脚への取り付けを前提としてアダプターもセットにするように強く要望した結果、三脚に取り付けることができるアダプターが付いています。
6)ケース
 ケースは布製で、柔らかい素材でできています。中にマイクとグリップを入れるポケットがあり、機材同士がぶつかって傷つけ合うことはない構造になっています。
7)重量と大きさ
 LISNのパラポラ+マイク+グリップ=重さが約450gあります。私が、使用しているワンポイントステレオマイクのAT825Nが約300g(ウインドジャマー含む)ですから、大きな違いを感じません。録音機のPCM-M1が約400gありますので、総体でも1kgにはなりません。
 なお、双眼鏡の重さは、いまだファンの多いニコンの8×30CFは約550g。現在愛用の双眼鏡スワロフスキーEL8.5×42は950gありますから、単体で中型双眼鏡とほぼ同じ、録音機とセットで大型双眼鏡の重さになるといったところでしょうか。
また、持った時にグリップが比較的重く重心が後ろに来るので、安定感もあります。
前述のように、PBR-330は33cm、こちらは36cmと一回り大きいのですが、その違いをあまり感じません。
6.価格
 LISNの価格は52,920円です。ソニーのPBR-330は、発売当時の1970年代後半で1万円以上はしていましたから、現在の物価から考えれば5万円以上の感じです。そのパラボラにステレオマイクが付いているのですから、まずまずの値頃感ではないでしょうか。
 また、フジプランニングが扱っているテリンガの同等品であるステレオマイク付きパラボラセット(PRO5 "ステレオDAT" マイクセット:パラボラ、移動用ソフトケース付)が151,000円ですから、それに比べればはるかに安い価格となっています。
 単純に、他のマイクと比較することは難しいのですが、たとえば同じ目的で野鳥の声を録音するのお勧めのオーディオテクニカのワンポイントステレオマイクのAT825が78,750円、AT822が31,500円、ソニーのECM-MS957が29,400円です。貴重なパラボラの機種ということであれば、5万円という値段は良いところではないでしょうか。
 現在は、フジプランニングのWebサイトを通じての通販の他、日本野鳥の会のバードショップなどでの販売を予定とのことです。
 録音機材は、双眼鏡や望遠鏡と違って探鳥会でユーザーの意見を聞いたり覗かせてもらうということは、なかなかできません。当リポートをご参考にしていただき、実際にショップで手にとって見ることをお勧めします。