ZOOM H2使用リポート



はじめに

 安い軽い高性能と三拍子そろった機種が出るとウワサがあって、約半年。やっと、発売になったH2。発売当日(2007年9月29日)に購入してしまいました。それだけ期待の機種ですが、はたして野鳥録音の使用に耐えるものなのか、使用リポートです。
 2008年1月現在、新機種の予告が複数メーカーから発表されています。ただし、現状での情報では、H2以上に安価な機種の発表は今のところありません。手軽に気楽に野鳥録音を始めてみようというならば、価格は大きな選択の条件となるでしょう。
 拙リポートが、その一助になれば幸いです。


1.使用機種と比較機種

○ZOOM H2 シリアルナンバー:00004612(注1)
○ROLAND R-09(黒) シリアルナンバー:DV28208(注2)
○ソニー リニアPCMレコーダ PCM-D1 シリアルナンバー:A100310
注1:使用に当たっては、メモリカードを添付の512Mから4G(SanDisk: SDSDBR-4096-J85) に換装、システム・プログラムをVer.1.02よりVer.1.10にバージョンアップしています。
注2:使用機種は、特定非営利活動法人バードリサーチよりお借りしたものです。メモリカードを添付の64Mから2Gに換装、システム・プログラムをVer.1.10よりVer.1.20にバージョンアップしています。
写真は、右からH2、PCM-D1、R-09。


2.使用期間と使用場所

 2007年9月より使用続行中
 
 栃木県日光市五葉平
 栃木県渡良瀬遊水池
 千葉県船橋市船橋海浜公園
 千葉県市川市里見公園
 千葉県本埜村
 東京都文京区六義園
 東京都豊島区染井墓地
 埼玉県さいたま市秋ヶ瀬公園
 山梨県富士五合目奥庭


3.セットと本体の外装

 本体のほかに、メモリー(512M・SDカード)、グリップ、台座、風防のスポンジ、AC電源アダプター、USBコードがセットになっています。なお、オーディオ用のソフトは付いていません。
 本体は、思いの外しっかりした造りをしています。PCM-D1と比べるのは失礼でしょうが、R-09と比べれば、H2のほうがしっかりした印象があります。初期のデジカメくらいの感じです。
 本体のおよそ3分の1がマイク部分で占められています。そのため、マイク付き録音機というより、録音機能のあるマイクといったほうが適切な感じのデザインです。色は銀メタリックの塗装で、いかにもプラスチック製という感じなのが残念ですが、その分、軽そうに見え、実際に軽いのですからよしとします。ちなみに電池込みの重さは約158gです。R-09が140gですから、多少重いことになります。
 ただ、付属しているグリップも台座もとてもちゃちで、プラスチック成型からそのまま取り出したという感じです。グリップはデザインも何も考えていないという単なる棒です。材質が軟らかいものであればグリップノイズも軽減できると思うのですが、堅いので本体を持ったときとノイズの具合は変わりません。せめて、ピストルグリップのような形をしていれば使う気にもなるのですが。ということで今のところ使用していません。
 台座は下に置いたとき、マイクを正面に向けるためのものです。おそらく、室内では立てかけるものがありませんから必要かもしれません。しかし、自然のなかではちょっとした石でもあれば、立てかけるのは可能です。また、台座をつけることでかえって地面と接する面積が増えてしまいます。それだけ、より広い平らなところが必要になりますから、かえって置く場所がなくなります。今のところ持って歩くことはありませんし、必要は感じません。
 ケースは、布製の袋が付いているだけでした。本体をカバーするケースはありません。私は、デジカメ用のケースでサイズの合うものを見つけて使っています。


4.初期設定


 初期設定はメニューを呼び出して、時間、電池の選択、SDカードのフォーマットの初期設定をする必要があります。この他、サンプリング周波数、WAVかMP3で録音するか、LOW CUT、PRE REC、ディスプレイのバックライトの点灯時間などが設定できます。
 ただ、このメニューがとても使いづらい仕組みになっています。階層は深くないし、メニューはシンプルな作りなのですが、カーソルを上下に移動するためには、左右のボタンを使わなくてはなりません。これがとても不便です。カーソルを上に動かすためには、上にもボタンがあるのですからつい上のボタンを押していまいますが左のボタンです。あるいは、下に移動させるためには右のボタンを押さなくてはならないのですが、やはりつい下のボタンを押していまいます。ずいぶん、メニューをいじりましたが、いくらたっても慣れません。人間工学的に、無理がある仕組みは、慣れることのない動作として誤動作を呼ぶのでしょう。
 また、右の側面にMIC GAINが3段階で設定できます。これはマイクアネッターと思えば良いでしょう。野鳥録音では、フルボリュームで録音することが多いで、Hightを意味するHに設定しておくことになります。Web上で、これが録音ボリュームと勘違いされ3段階しか変更できないという書き込みがありました。録音ボリュームは、L、M、Hそれぞれ1-127段階の設定ができます(多少オーバーラップしているが)ので、かなり細かな設定ができることになります。


5.操作性

 起動は、左側面にあるスイッチをスライドします。およそ3秒ほどで、録音可能になります。これは早いです。
 録音や再生は、中央にあるボタンを押します。ボタンは、浅くクリック感があまりないので反応したかどうか、不安になります。ディスプレイを見てちゃんと思った通りになっているか、確認したほうが無難です。
 録音は、赤い●ボタンを押してさらにもう一度、録音ボタンを押すことで始まります。そして、録音を止めるのは、また録音ボタンを押します。これも、ほかの機器とは違う操作のため、考えて行動をしないと間違えます。ふつうならば、録音ボタンを押してすぐ始まるか、同時にプレイボタンを押す、あるいは一時停止ボタンを解除して、録音開始となる印象があります。また、止めるのは停止ボタンが普通ですが、皆違うのですから、とまどいます。これ1機種だけを使っているのならばよいのですが、平行して別の機種を使用していると、この操作の違いが誤作動の元になりかねません。注意が必要です。
 なお、録音中にプレイボタンを押すと、音源のなかにマークが設定されてしまいます。別に、音には関係のないのですが、とても気になります。
 ホールドは、メニューボタンの長押しです。この長押しがけっこう長く押さなくてはならず、急いで解除したいときにはイライラしてしまいます。時間にするとわずか3秒たらずなのですが、スライドスイッチならば瞬間的に解除できるのですからイラつくわけです。そのため、誤作動覚悟でホールドはかけないようにしています。結果、プレイボタンが押されてたことはありますが、録音は2度押しなので録音してしまったことは今のところありません。
 録音ボリュームは、R-09と同じように録音を開始しないと変更できません。ただ、基本的には最大のボリュームに設定しておくので困りませんが、微妙な調整が必要な場合には面倒です。また最大のボリュームの数字が127というたいへん中途半端な数字です。はじめは、どうして途中で止まってしまうのか、何度もボタンを押してしまいました。
 また、録音のサンプリング周波数の設定をメニューで変更したり、録音ボリュームの設定をしておいても、メモリーをフォーマットしてしまうとすべてデフォルトの設定に戻ってしまいます。たとえば、サンプリング周波数は41.1kHz/16bit、録音ボリュームは100になってしまいます。これらの設定情報が、メモリーに保存されているためです。
 これは、かなり不便なことで、録音した音源ファイルが少なければ一つ一つ削除すればよいですが、多いとフォーマットしたほうが早いのでフォーマットしてしまいます。そうすると、そのたびにまた設定し直さなくてはなりません。


6.録音の実際

 小型軽量なので、持って歩くのがまったく苦にならないのはありがたいです。これが、この機種の最大の利点といえるでしょう。フィールドジャケットを着ていれば、大きめのポケットが付いていますから、ポケットに入ります。鳥が鳴いていたらポケットから取り出してすぐに録音できますから、チャンスを逃すことは少なくなります。また、暑いときは、デジカメ用のケースに入れてベルトに付けていてもじゃまになりません。腰に携帯電話を付けているのと変わらない程度のものです。
さらに軽いということは、どこにでも置けます。持っているとどうしてもグリップノイズが入ってしまいます。自分のたてる衣擦れ、息づかいといった音も入ります。できたら、そっと小枝の上に置いて、鳥にも録音にも影響のないところで離れていたいところです。H2は軽いので、枝や茂みの上に置けます。虫の声の録音では、ヤブガラシの絡んだ藪の上に置いても、落ちることなくスズムシの声を録音することができました。
 また、H2やR-09のような小型で目立たない録音機の活用として、置いたままにして気楽に録音する方法ができます。メモリーとバッテリの残量を確認したら、鳥の来そうなところに1時間や2時間、置いておいてあとで回収して鳥の鳴いているところだけを取り出す方法です。
 実際、富士山の奥庭山荘の水場に朝の暗い内から置いておいて、朝食までの1時間50分録音してみました。その間、ホシガラス(写真)の親子、ウソ、メボソムシクイなどが来てくれました。この録音では、ホシガラスの幼鳥が猫のような声で鳴くことを初めて知りました。また、ウソやメボソムシクイの「ブルルッ」という水浴びの時の羽音は、とても臨場感ある音に録れました。
 置きっぱなしにして万が一、雨が急に降り出して濡れて壊れてしまったり、誰かに持って行かれたら悔しいことは悔しいです。しかし、価格が安いので惜しさが少ないことが、この録音方法をとれる機種になります。落とし物と思ってほかのバードウォッチャーに拾われないように「ただ今、録音中。手を触れないでください。」という札をそばに置いておけばよいかもしれません。
 以下のサンプル音源は、Wavファイルです。
 48kHz/16bitで録音したものの一部を無加工で、アップしています。なお、


水場のホシガラス
収録年月日:2007年9月4日
収録場所:山梨県鳴沢村奥庭
録音メモ:水場に置いたままにして録音したもの。


水場のメボソムシクイ
収録年月日:2007年9月4日
収録場所:山梨県鳴沢村奥庭
録音メモ:水場に置いたままにしてろくおんしたものの。


土浦の花火大会
収録年月日:2007年10月6日
収録場所:茨城県土浦市
録音メモ:これは、カミさんの録音。はじめて持って行ってこれだけ録れる。


7.内蔵マイク


 正面には90度の角度でマイクが2個、裏には120度の角度でマイクが2個。合計4個のマイクが付いています。ステレオで前か後ろ、前後のマイク一つずつを使って180度でのステレオ、4つのマイクをすべて使用してマルチチャンネルで録音するかの選択ができます。4ch録音ができるのも、このH2の特色です。また、どのマイクが生きているのは、赤い小さなランプが点灯して知らせてくれます
 マイクが裏表に付いているために、録音の対象にマイクを正確に向けるためには、録音機を立てることになっています。たとえば、目の前の藪でウグイスが鳴いていたら、水戸黄門で角さんが印籠を取り出したときのように向けなくてはならないことになります。今まで、PCM-D1やR-09では、突き出すようにすればよかったのですが、ちょっと勝手が違います。ただ、もし木の下にいて木のてっぺんでさえずっているオオルリを録音するのであれば、寝かせて置けばマイクが上を向き適正な位置になります。
 ただ、いろいろ録音をしてみましたが、寝かせておいてもあまり強い指向性があるわけではありませんので、音の的をはずしているようには聞こえませんでした。
 録音のステータスは、mp3からwavでは、96kHz/24bitの高品位まで可能です。音質は、とくに低音が強かったり高音が強調されているようなことはありません。クセのない音で自然な感じで録れます。特有のノイズもなく、音に関しては問題ありません。
 高品位録音も問題なくできます。残念ながら、高品位録音による音の違いを見い出せないでいます。我が家の再生環境では、その差がわかりません。96kHz/24bitで録音したPCM-D1とH2のセミの声をアップしておきます(高品位録音は、ソフトによっては再生できません)。しいて言うと、グランドノイズの「ゴーッ」という音がH2のほうが多少大きく聞こえるくらいです。これは、低音が強調されるスピーカーでは違いがわからないかもしれません。録音によっては、この音が必要な場合もあるでしょうから音の良し悪しの判断は難しいものです。
 感度は、PCM-D1より落ちるもののR-09と同じくらいで録れます。ようするにどちらも野鳥録音のときは、フルボリュームで録るとちょうどよいことになります。近くても10mは離れて鳴いている小鳥の声が、-12db得られればOK、少なくとも-24dbは欲しいところです。おおむね、それくらいのボリュームを得ることができます。
 ステレオ感は、さほど鋭く感じません。右や左で鳴いている違いがはっきりと表現はされません。ただ、右から左へ移動していく感じは録れます。
 H2の売りの4チャンネル録音は、セミの合唱と夜のカンタンの録音してみました。ただ、我が家に再生環境がありませんので検証できません。もし4チャンネル再生が可能な方は、加工してお試しください。
 4チャンネル録音をした場合、専用のファイルになるのではなく、2チャンネルずつのWAVファイルが2個できます。これを加工して、マルチチャンネルの環境で再生するわけです。ここでは、それぞれ2つのファイルとしてアップしておきます。なお、4チャンネル録音をすると4チャンネル用のフォルダーがあって、そこにファイルが形成されます。


H2による96kHz/24bit録音
収録年月日:2007年9月8日
収録場所:東京都文京区六義園
録音メモ:おもにツクツクボウシ。


PCM-D1による96kHz・24bit録音
収録年月日:2007年9月8日
収録場所:東京都文京区六義園
録音メモ:おもにツクツクボウシ。

セミの録音風景

セミの合唱4chの前のマイク
収録年月日:2007年9月8日
収録場所:東京都文京区六義園
録音メモ:おもにツクツクボウシ。下と音源と合わせて4chです。


セミの合唱4chの後ろのマイク
収録年月日:2007年9月8日
収録場所:東京都文京区六義園
録音メモ:おもにツクツクボウシ。上の音源と合わせて4chです。


カンタンの声4chの前のマイク
収録年月日:2007年9月22日
収録場所:栃木県日光市
録音メモ:草むらで鳴いています。下の音源と合わせて4chです。


カンタンの声4chの後ろのマイク
収録年月日:2007年9月22日
収録場所:栃木県日光市
録音メモ:上の音源と合わせて4chです。


8.外付けマイク録音について

 この機種で、果たして外付けマイクでの録音が必要でしょうか。定番のAT822やAT825、あるいはNT-4などのステレオマイクを装着しての録音を考えると、マイクの方が大きくて重いことになります(値段もマイクのほうが高い)。また、マイクコードをH2に差し込む準備、さらにマイクコードを伸ばして置く時間を考えると、チャンスを逃す可能性があります。さらに、これらの動作で鳥を驚かせてしまい逃げられてしまうかもしれません。これらを考えると、わざわざ外付けのマイクを使う必要はないと思います。
 せっかく内蔵マイクが付いて、1台ですべてが完結しているのですから、その特性を生かす録音を考えるべきでしょう。この機種の能力を最大限に活用するためには、内蔵マイクのままの使用がよろしいと思います。


9.ディスプレイ

 明るさは十分で日向でも見えます。ただし、ディプレイも小さく、26mm×16mmです。ちなみに、PCM-D1が48mm×25mm、R-09が27mm×13mmです。PCM-D1の約半分の大きさに見えます。R-09より天地は大きめですが、小さいことに変わりなく、アイコンやいろいろな記号が見えにくいですね。
 なんとか、いちばん重要な録音レベルの表示と録音時間は、大きめの表示なので現状の私の目で視認できます。ただ、それ以外の細かい表示は、老眼の始まった者には見えにくい、あるいはまったく見えないアイコンとなります。


10.風防

  風防には、専用の黒いスポンジが付いています。スポンジをかぶせてもディプレイが隠れることなく、見えます。ただ、このスポンジはかぶせるだけですので、すぽっと抜けてしまいます。そのため、左右をマジックテープで止めて使っています。
 また、スポンジだけでは心許ないので、AT822用のウインド・ジャマーを付けたところちょうどサイズが合いました。風防の効果もありましたので、野外の録音ではこの体制で臨みたいと思います。ただ、ディスプレイは隠れてしまい見にくくなります。


11.バッテリ


 H2は、単三乾電池2本で作動します。裏の蓋を開けて、差し込むだけです。TVのリモコンの電池を入れるのと変わりありません。どうしてこんな簡単なことが、R-09やPCM-D1では複雑な構造の蓋になっているのか不思議です。
 バッテリの持ちを客観的に評価するのはたいへん難しいものがあります。現在、eneloopを使用していますが、4本5セットそれぞれ購入時期が異なるので、劣化の具合が違います。また、スタンバイの状態があったり、電池の消耗具合をまったく同じにすることは不可能です。そのため印象です。
PCM-D1のバックアップ用に使用して平行して使った場合、PCM-D1は単三乾電池4本ですから、同じように比べるのは無理があります。ただ、R-09と平行して使用したところ、はるかにH2のバッテリの減りが早いと感じました。印象としては、半分くらいの時間しか持ちません。野鳥録音の場合、チャンスを待ってスタンバイ状態にしていたり、つけたり消したりすることが多いのです。これをやると電池の消耗が早くなるようで、合計で20分程度しか録音できないこともありました。
 ただし、長時間の録音では、カタログに近い時間が録音できました。たとえば、前出の奥庭山荘で水場に置いての録音では、48kHz/16bitの設定で1時間50分間、問題なく録音ができています。


12.ファイルの転送と形成

 録音が終了すると音源ファイルが形成されます。ファイル名は”STE-000”が最初で、番号が増えていきます。PCM-D1のように日付入りのファイル名ではないので、メモリーをフォーマットしたり、すべてのファイルを削除して録り直し始めると、また000から始まります。要するに、同じファイル名のファイルができます。ですので、コンピュータに転送して保存する場合、同じフォルダーに送って上書きする恐れがありますので、注意が必要です。
 また、ファイルには形成された(録音終了時の)時間がつきます。H4では、この機能がなかったために、記録が必要な野鳥録音では評価がさがりました。H2は、WAVファイルとなっていますが、実はBWFファイルです。BWFは、時間だけではなく録音機種名などが、ファイル内に記録されます。たとえば、AdobeのAudition2.0などの音響ソフトを使えば、メモも同時に記録することができます。学術的な記録が必要な録音には活用できるファイル形式です。
 USBコードをコンピュータにつなげると、本体のディプレイに転送のための画面が出てきます。メニューが出て、転送モードかディバイスモードかの選択をしなくてはなりません。そのために、本体のボタンを一度押す必要があります。
 転送時間は、遅いです。なぜかUSBの遅いバージョンです。急ぐときは、カードを抜いて早いカードリーダーを介して転送するのがおすすめです。


13.その他の機能

 音楽のためのいろいろな機能が付いています。たとえばメトロノーム機能など。野鳥のための野外録音では、使いませんので試してもいません。
 さらに、音源を加工する分割やノーマライズ機能なども本体でできます。しかし、前述のようにメニューがたいへん使いにくいので、操作が思うようにできずイライラします。また、Web上では時間がかかる、メモリーに空き容量がないとできないなどが報告されています。基本的には、コンピュータに取り込んで、専用ソフトを使用したほうが早く確実です。


14.価格

 私が発売当日に購入したときは、23,500円でした。それから3ヶ月たちましたが、思ったほど安くなっていません。2008年1月現在の最安値が21,000円で、平均価格は発売当時とほとんど変わりません。
 H2は、風防もありメモリーもぎりぎりの容量が添付されていますから、基本的にはあとバッテリがあればそのまますぐに使えます。願わくば、数千円のウインド・ジャマー、2G以上のメモリー、しっかりしたケースがあったほうがよいでしょう。そこまで投資しても3万円で収まるでしょう。
 いずれにしても、現在発売されている機種のなかでは、もっとも安い機種であることに変わりません。それでいて、ちゃんと録音できて高品位録音が可能、さらにマルチ録音ができるというのですからお買い得です。いろいろ使い憎い点を書き連ねましたが、それを覚悟していただき、この値段なのだと理解して購入していただければよろしいかと思います。私としては、この値段でこの機能、使いにくさは許容範囲です。
 双眼鏡より安いのですから、初心者が鳴き声のわからない鳥の声をとりあえず録音してベテランのバードウォッチャーに聞いてもらうための機材としておすすめです。ベテランは、しっかりと録音して家で加工して野外で聞くのと同じように楽しむことができるでしょう。野鳥録音が目的であり、すでにPCM-D1などの機材を持っているのならば、バックアップ用の機材としてもおすすめです。一発勝負の野鳥録音で、録音したつもりが一時停止が解除してなくて録音されていなかったり、バッテリ切れ、メモリー不足など、数々の失敗をしています。それが、バックアップ用の機材があることで解消できます。わずか2万数千円の保険料と考えたらこんな安いものはありません。


16.まとめ

 H2は、音楽機材のメーカーであることも含めて、基本的には個人の演奏を録音するための機種として設計されたものだと思います。愛読者カードにも音楽のジャンルをたずねる設問があっても「野鳥録音」はありません。H2は、室内で小規模なコンサートや練習を録音しておくためには、たいへん有効な機種だと思います。
 野鳥録音の創始者ともいえる蒲谷鶴彦先生は、長い間、インタビュー用の機材で録音していました。当時は、外へ持って行ける録音機はそれしかなったのです。それでも、素晴らしい録音を残しています。それを思えば、H2は演奏録音用とは言え録音機として十分な能力を持っているのですから、野鳥録音でも活用できます。
 自然のなかでの野鳥録音は、ノイズだらけのなかでいかに目的の野鳥の声を際だたせて録るかにかかっています。より良い録音をするためには、マイクポジションが大きく影響します。いくらよいマイクや録音機を使っても、遠くからでは良い音は録れません。いかに音源の鳥の近くにマイクを置くか。野鳥観察の知識と経験を最大限生かして、鳥を驚かせず、警戒させず、お鳴きいただき、録音させていただけるかにかかっています。ノイズの多い自然の中では音はそこそこであれば十分、簡単便利な操作でチャンスを逃さず鳥を驚かせないことのほうが比重が大きくなります。その意味ではH2は、野鳥録音には十分に威力を発揮する録音機だと思います。
 H2の良いところは、軽くて安いということでしょう。コンパクト・デジカメ同様、メモ代わりに持って歩けます。不明な声が聞こえたら、ポケットから取り出してすぐに録音できます。もし、H2のような機種がバードウォッチャーの間に普及したら、新しい知見の発見はもとより、鳴き声による新記録の鳥が増えることでしょう。(2008年1月3日・起稿)